天は赤い河のほとり 史実|エジプトからの書簡とモデルを解説

天は赤い河のほとり 史実|エジプトからの書簡とモデルを解説

TVアニメ『天は赤い河のほとり』が、いよいよ第2クールに入ります。第13話「エジプトからの書簡」は、9月29日放送です。

タイトルのとおり、敵対国であるエジプトからヒッタイトへ一通の書簡が届くところから物語が動き出します。そして、この書簡には元になった史実があります。紀元前14世紀に実際に起きたザナンザ事件です。

この記事では、書簡にまつわる史実と、第2クールで動き出す登場人物たちのモデルを整理します。放送前の予習にどうぞ。

※当サイトの信憑性ラベル:「史実」は歴史資料で確認できるもの、「有力な説」は研究者の間で広く支持されているもの、「考察」は根拠はあるものの推測の段階のものです。

※原作の展開に触れる部分があります。アニメだけを追っている方はご注意ください。

この記事の結論

  • エジプトからヒッタイトへ届いた書簡は、実際に存在した(史実)
  • 差出人は、ツタンカーメンの未亡人と考えられている(有力な説)
  • ヒッタイトの皇子ザナンザは実在し、エジプトへ向かう途中で殺された(史実)
  • カイルもナキアも、モデルとされる実在の人物がいる(有力な説)
目次

第2クールはここから始まる

第13話のあらすじは、すでに公開されています。ミタンニとの戦いに勝利してヒッタイト軍が遠征から戻り、現代日本へ帰る機会を逃したユーリもハットゥサでの暮らしに戻る。そんなある日、敵対国のエジプトから書簡が届く──という流れです。

第2クールでは、ナキアの子・ジュダや、「偽イシュタル」と呼ばれるウルスラが登場し、ユーリをめぐるカイルとラムセスの対立も本格化します。オープニングテーマは水樹奈々さんの「暁の星」です。

「エジプトからの書簡」の史実|ザナンザ事件とは

紀元前14世紀、エジプト第18王朝の若い王が亡くなりました。跡を継ぐ子がいなかったため、残された王妃は驚くべき手紙をヒッタイトの大王シュッピルリウマ1世に送ります。信憑性ラベル:史実

手紙の内容は、「あなたの息子の一人を私の夫にしたい」という求婚でした。敵対国の王子を自国の王に迎えるという、前例のない申し出です。

ヒッタイト側の記録に、この王妃は「ダハムンズ」と記されています。これはエジプト語で「王の妻」を意味する言葉で、個人名ではありません。研究者の間では、ツタンカーメンの妃アンケセナーメンだとする見方が有力です。信憑性ラベル:有力な説

疑ったシュッピルリウマ1世

あまりに都合のよい話だったため、シュッピルリウマ1世は罠を疑い、使者を送って真偽を確かめさせています。エジプト側からも使者ハニが派遣され、念を押されたうえで、ようやく息子を送ることを決めました。

選ばれたのが、皇子ザナンザです。

ザナンザはエジプトに着けなかった

ザナンザはエジプトへ向かいましたが、その途上で殺されます。信憑性ラベル:史実

誰が手を下したのかは、粘土板の記録が途切れていて分かっていません。エジプト側の有力者であったアイかホルエムヘブによるものとする説が知られていますが、確かなことは言えないままです。

息子の死を知ったシュッピルリウマ1世は激怒し、エジプト領への侵攻を始めます。そしてこのとき連れ帰った捕虜を通じて、ヒッタイト国内に疫病が広がりました。シュッピルリウマ1世自身も、この疫病で命を落としたと伝えられています。

一通の手紙が、一人の皇子の死と、国を揺るがす疫病を招いた。史実のほうが物語より劇的なほどです。

作中のザナンザはどう描かれるか

原作では、ザナンザはエジプトへ婿入りする途中で襲撃を受け、ユーリをかばって命を落とします。襲撃を仕組んだのはナキアでした。

史実では犯人が分かっていない事件に、「ナキアの謀略だった」という答えを与えているわけです。記録の空白に物語を差し込む、この作品の得意な手法といえます。信憑性ラベル:考察

登場人物のモデルは実在した?

『天は赤い河のほとり』には、実在の人物の名前がそのまま使われています。主要人物のモデルを表にまとめました。

作中の人物 モデルとされる人物 ラベル
カイル・ムルシリ ムルシリ2世 史実の人物
ナキア マルニガル(バビロニア出身の皇妃) 有力な説
ザナンザ ザナンザ皇子 史実の人物
ユーリ ガッスラウィヤ(ムルシリ2世の妃) 有力な説
ラムセス ラムセス1世とする説が知られる 考察

カイル=ムルシリ2世

カイルのモデルは、ヒッタイトの大王ムルシリ2世です。シュッピルリウマ1世の息子で、母はヒンティ。この家族構成は、作中の設定とほぼ同じです。信憑性ラベル:史実

ムルシリ2世は、父の死後に広がった疫病と各地の反乱という難しい状況で即位し、ヒッタイトの最盛期を支えた王として評価されています。

ナキア=バビロニア出身の皇妃

ナキアの肩書きである「タワナアンナ」は、ヒッタイトの第一后妃を指す実在の称号です。皇帝から独立した権力を持つ、特別な地位でした。信憑性ラベル:史実

作者の篠原千絵さんは、ヒッタイト研究者の資料を読み込む中でこのタワナアンナの存在を知り、作品の構想を立てたと伝えられています。ナキアという人物は、この称号があったからこそ生まれたわけです。

モデルとされるのは、シュッピルリウマ1世の妃でバビロニア出身のマルニガルです。彼女が嫁いできたことで、先の妃ヒンティが地位を追われたと推定されています。カイルの母ヒンティが宮廷を去っている作中の設定と重なります。信憑性ラベル:有力な説

ユーリのモデルとされる王妃の最期

ムルシリ2世の妃ガッスラウィヤは、即位から9年目に亡くなりました。ムルシリ2世は、その死をバビロニア出身の皇太后マルニガルによる毒殺だとして裁判にかけ、追放しています。信憑性ラベル:史実

愛する妃を失った王が、バビロニア出身の皇太后を告発する。作中でナキアがユーリの命を狙い続ける構図は、この記録がもとになっていると考えられます。

ユーリのモデルについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

☆☆ 天は赤い河のほとりの都市伝説・史実との違いまとめ

ラムセスは実在したのか

カイルの最大のライバルとして描かれるエジプトの将軍ラムセス。原作では、のちにラムセス1世となる人物として描かれています。信憑性ラベル:考察

ラムセス1世は実在しますが、王として在位したのはごく短い期間で、しかも高齢での即位でした。作中の若く精悍な将軍像とは、かなり印象が違います。

このあたりは、史実の年代をそのままなぞらず、物語として成立する形に組み替えていると考えるのが自然でしょう。ヒッタイトとエジプトの王の在位年には諸説あり、単純に並べて比べられない点も押さえておきたいところです。

「偽イシュタル」ウルスラは創作?

第2クールで登場する「偽イシュタル」ウルスラについては、対応する実在の人物の記録が見当たりません。物語のために作られた人物と考えられます。信憑性ラベル:考察

ユーリが「イシュタル」と呼ばれて神のように扱われているからこそ、偽物という存在が脅威になる。この仕掛けは、史実ではなく物語の必要から生まれたものです。

史実を知ってから観ると面白いポイント

  • 書簡の重み:一通の手紙が戦争と疫病を招いた史実を知ると、第13話の緊張感が増します
  • ナキアの権力:タワナアンナが皇帝と並ぶ権力者だったという史実を踏まえると、カイルが簡単に手を出せない理由が分かります
  • ユーリの立場:モデルとされる王妃の最期を知っていると、ナキアとの対決の意味が変わって見えます

もっとも、この作品は史実の再現ではありません。記録が残っていない部分に物語を通す「歴史ロマン」として楽しむのが、いちばん面白い読み方だと思います。

よくある質問

「エジプトからの書簡」は実話ですか?

もとになった出来事は実際にありました。エジプトの王妃がヒッタイトに王子を求めた書簡は、ヒッタイト側の記録に残っています。

書簡を送った王妃は誰ですか?

ヒッタイトの記録では「ダハムンズ」と記されており、これは「王の妻」を意味する言葉です。ツタンカーメンの妃アンケセナーメンとする説が有力とされています。

ザナンザは実在した人物ですか?

実在します。シュッピルリウマ1世の息子で、エジプトへ向かう途中で殺害されました。誰が殺したのかは分かっていません。

第2クールはいつから放送されますか?

第13話「エジプトからの書簡」が、2026年9月29日に放送されます。

まとめ

  • エジプトからの書簡:実在した(史実)
  • 差出人:ツタンカーメンの未亡人とする説が有力(有力な説)
  • ザナンザ:実在し、道中で殺された。犯人は不明(史実)
  • カイル:ムルシリ2世がモデル(史実の人物)
  • ナキア:バビロニア出身の皇妃マルニガルがモデルとされる(有力な説)
  • ウルスラ:対応する人物の記録は見当たらない(考察)

3000年以上前に実際に交わされた一通の手紙が、物語の第2クールを動かします。9月29日の放送前にこの背景を頭に入れておくと、ヒッタイトの宮廷に流れる緊張がまるで違って感じられるはずです。

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